道明寺天満宮蔵。
その名の通り、「北野天神の縁起を扇面に描いて貼り交ぜにした屏風」です。
縦5枚×6面×2つ=60枚の画面に、ごくごく短い説明文と対応する絵が描かれています。

(写真提供:九州国立博物館)
通常、「扇面屏風」と呼ばれるものの多くは、
「扇に貼る紙の形に切った紙を貼りつけた」屏風です。
しかしこの屏風の扇面に画面にはくっきりと折り筋が残っており、
元々は扇に仕立てられたものを、屏風に仕立て直したことが分かります。
一見しただけでは60枚すべてが同じ時期に描かれたように見えますが、
一部色調が薄く白味を帯びたものがあり、
それらは後世に追加で制作されたもののようです。
現在は右上から左上へ読み進められるように並べられていますが、
以前は順番などお構いなくバラバラに貼られていました。
それを補修がてら天神縁起の順序に沿って貼り直したのは、つい数年前のこと。
あちらを見てこちらを見るという立ち位置の変更を繰り返した挙句に
腰を痛める心配がなくなったのは、本当にありがたい事です(笑)。
ちなみに、詞書と絵が一致しないものも存在します。
19枚目がまさにそれで、
合掌する貴族を描いた画面構成、
「恩賜の御衣」の後、「天拝山(てんぱいざん)」の前にある位置関係から、
道真から『菅家後集(かんかこうしゅう)』を贈られた紀長谷雄が、
天を仰いで嘆息するシーンである事は間違いないのですが、
「九月十五日に月を見て昔を偲ぶ」うんぬんと、異なる文章がついています。
天神縁起を読むと、長谷雄が贈られた詩のひとつとして、
9月13日に道真が詠んだ詩を引いているので、これを指しているようですね。