特別展開催に向けての準備中に、所蔵元である対馬の神社からから問合せがあり、
その存在が明らかになった天神縁起です。
おそらく論文にはなっていないので、新聞報道や図録解説を参考に説明しますと、
地元の話題を盛り込んだ、いわゆる「ご当地縁起」色が極めて強いものです。
「道真伝」「怨霊譚」「霊験譚」の3部からなる天神縁起の基本構成から霊験譚を省き、
「川面に姿を映して落魄した身の上を嘆く道真」 (←水鏡天神)
「麹(こうじ)米を食事にと道真に差し出す老女」(←梅ケ枝餅のルーツ)
「天拝山への道すがら、鉄斧を砥(と)いで針にしようとする老人に出会い、
努力の重要性を思い知らされる道真」(←針摺峠(はりすりとうげ)の地名の由来)
など、地元福岡・太宰府ゆかりの話題を盛り込んでいます。

(写真提供:九州国立博物館)
※写真は前期のもので、綱敷天神と麹米です。後期は水鏡天神と恩賜の御衣。
類型化の容易な、従来の天神縁起とは明らかに異なるという印象を受けます。
太宰府天満宮蔵の元禄本「天満宮縁起」という文章のみの天神縁起をベースに
絵巻化したものとのことです。
図版でいいので、25段(←天神縁起は33段が基本なので、やっぱり異質です)
まとめて見てみたいですね。章段構成が非常に気になります。