会期後半に展示されるのは巻3と巻5。今回から順番にあらすじを書いてゆきます。
醍醐天皇は父宇多法皇の御所を訪れ、両者の間で極秘会議が開かれました。
その結果、呼び出されたのは左大臣藤原時平ではなく、右大臣菅原道真。
「そなたを関白に任じようと思う」。
この言葉に道真は驚愕し、ただひたすら固辞するばかりでした。
呼ばれた口実を作るため、道真は詩の題を賜ってから公卿の控え室に戻りましたが、
自分を差し置いて呼び出された事に対し、時平は不満の色を隠せませんでした。
(写真提供:九州国立博物館)
道真を関白に任じようとしたが、未遂に終わったという話は、
安楽寺の巫女の託宣に出てきますが、真偽の程は定かではありません。
ただ、「寛平御遺誡」の内容でも分かるように、宇多院と道真の君臣関係は、
あまりに親密すぎて周囲の邪推を買う余地があったのは事実です。
展示部分は行列に従う人々の姿が延々と続きますが、本題は左端にちょっとだけ。
室内に座す天皇と法皇の前に、平伏する正装の道真。
この無意味なまでの冗長さが、承久本の特色でもあります。