51「束帯天神像」荏柄天神社の誇る(?)巨大な「雲中(うんちゅう)天神」の掛軸です。
幅135cm、高さ189.5cm。いわば実寸大の天神画像です。
アイキャッチ的な飾られ方をするだろうと期待していたら、
予想通り、観世音寺梵鐘の次、展示室の入口すぐの場所に展示されていました。
(写真提供:九州国立博物館)
雲中天神については
先に書いてしまいましたので、宣言通り昔話をします。
「懐古談なんかどうでもいいから、次の展示品を出せ!」という前向きな方は、
下の文章は無視して1日だけ待って下さい。明日があります。
2001年7月10日午前8時30分、
東京上野・東京国立博物館付近に、10数名の若者達が集まっていました。
彼らのお目当ては、この日から始まる特別展「天神さまの美術」。
その中に、格安のツアーバスで上京した筆者と、首都圏在住のY先輩の姿がありました。
少しずつ、少しずつではありますが、次第に増えていく人を、
穏やかとは言いがたい朝の陽光を木陰に避けつつ眺めながら、ぼそりと一言。
「せっかくなので一番乗り狙いますが、どうします?」
この年の春、特別展「北野天満宮神宝展」の初日に京都国立博物館に行ったところ、
正面入口でただ一人待っているうちに開館時間になったという顛末がありました。
それに対し、待ち伏せ組が出揃う状況に、俄然やる気になったのです。
「いや、後からゆっくり行くので……。頑張ってね」
そんな遠慮深い声援(冷静な反応?)を背に、門の付近に陣取りました。
午前9時前、開門。
周囲を無視してスタートダッシュを掛けたはずが、
目の前をさっそうと駆けてゆく女性がひとり。
ええ、自慢じゃないですが、情けない程足が遅いです。
「こんな馬鹿げた事を考える奴が何で他にもいるんだ〜!?」と心の中で叫びながら、
「ああ、やっぱり徒競走では勝てそうにない……」と自分の身体能力を嘆きながら、
それでも必死で後をついて行くと、
「ここから入ると遠回りになるので、○○から入って下さい」
という看板が目に入りました。
前方の彼女は、「遠回り」と指摘された、その道へ走っていきます。
「これって逆転勝ちかも……!」
ガッツポーズを取りたい気持ちをこらえ、一見大回りに見える近道に突入。
果たせるかな、会場入口に最初にたどり着いたのは筆者の方でした。
まあ相手の失着で勝ったようなモノなので、あんまり自慢にはなりませんね。
取りあえず所定の目的は果たしたので、入口で先輩が来るまで待機。
ごく普通に徒歩でやってきた先輩と合流し、意気揚々と会場に入ると、
さっそく出迎えてくれたのは、この絵だったのです。
「ええ、来ましたよ、道真さん!」
絵を前に、そう言い切ってしまいたい気分でした。
特別展の前日に開会式と内覧会がある事を当時は知らなかったので、
こんなふざけた先陣争いを本気でやっていたのですが、
開会式に招待されれば人より早く見られることを覚えた今は、もうやりません。